患者さんの母親が、出産時に子宮収縮薬(オキシトシン)投与を受け、帝王切開後経腟分娩試行(TOLAC)を受けたところ、子宮破裂し、それが原因となって患者さんは脳性麻痺になってしまいました。産科医療補償制度が施行されるよりも前の事故であったために補償を受けることができず、相手方病院が責任を否定して賠償を受けることもできなかったため、相談者(患者さんとそのご家族)は弊所にご相談くださいました。
証拠保全により医療記録を入手して調査した結果、有責の結論に達しました。しかし、相手方からは、子宮破裂の危険性を含めて十分な説明を事前にしたから無責である旨の回答があったため、請求段階の選択肢を訴訟に絞りました。
しかし、調査段階において多数の医師に意見を求めましたが、有責の顕名意見書を得ることはできず、訴訟では立証に難渋することが予想されました。敗訴する可能性が高いと見込まれたため、依頼者には敗訴するリスクを丁寧に説明し、理解いただいてから訴訟へ移行することとなりました。
訴訟とは別に、投与された子宮収縮薬の副作用として子宮破裂が生じたとの見解に基づいて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の副作用被害救済給付の申請をしたところ、給付金を受給できることとなりました。
訴訟においては、緊急帝王切開移行義務違反が主要な争点になりましたが、本訴訟において医学専門書を多数引用した170ページ以上の主張書面と50点以上の証拠を提出し、何とか裁判所の心証をこちら側に向けさせることができました。提訴から2年4ヶ月を経て、訴訟上の和解を締結し、損害賠償金1億2000万円を獲得しました。
また、PMDAの給付金については約3000万円相当として計算し、合計で約1億5000万円相当を獲得することに成功しました。