こちらは解決事例「分娩中に心不全を発症した母親に対し、診察なしにATP(アデホス)を投与したところ母児の循環不全が起こり、児が脳性麻痺となったことについて、1億9440万円(産科医療補償制度補償金既払金を含む)の和解が成立した事例」のページです。
相談者らの子である亡児について、出産した際、娩出直前に臍帯圧迫による急激な徐脈によって胎便吸引症候群に陥り、娩出から約30分間を経過した頃に死亡したという一連の事実経過に関して、相手方病院へ損害賠償等を求めた事案です。
まず、任意開示によって相手方病院より医療記録を入手しました。これを基に医学的見地および法的見地から調査した結果、相手方病院の対応には過失があるものと判断しました。
依頼者らは、お金よりも医療機関からの謝罪や再発防止を求めていたため、まずは、相手方との話し合いによる交渉が重要であると考えました。
そのため、訴訟手続きではなくADR(裁判外紛争解決手続)へあっせんの申立てを行うことにしました。
ADRにおいては、相手方が、娩出された亡児に対して直ちに適切な蘇生措置を施すべき注意義務を負っているにもかかわらず、同義務を履行していれば亡児の死亡がもたらされることはなかったのではないかという点で争われました。
ADRへ申し立てた結果、あっせん申立てからおよそ5ヶ月で、訴訟外としては高額の1000万円の賠償金を支払わせることで和解を成立させることができました。
32ページにもおよぶ、あっせん申立書を起案し、その他多くの証拠とともにADRへ申し立てた結果、訴訟移行のリスクを現実的なこととして相手方に感じさせることができたことが、高額の和解に至った要因と思われます。
また、依頼者らが最も望んでいた相手方の謝罪についても、「事故を重大なことと受け止め、謝罪の意を表し、再発防止のために努力する」との回答を得ることができました。